飲食店を開業するうえで見落とせないのが「深夜営業の許可」と「プレオープン」の準備です。開店準備が順調でも、許可の手続きが遅れると営業がストップすることも。また、プレオープンをどう活かすかでその後の集客に差が出ます。
本記事では、深夜営業を行うための届け出とプレオープンの実施方法を、わかりやすく丁寧に解説します。
深夜営業の許可とは何か?

深夜営業の許可とは、正式名称を「深夜における酒類提供飲食店営業開始届」といい、0時~6時にかけてアルコールをメインで提供する飲食店が営業を行うために必要な手続きです。風俗営業法の規定に基づいて、店舗所在地を管轄する警察署へ届け出ます。
この許可を要するのは、たとえばバーや居酒屋などの業態。ファミリーレストランやラーメン店のように、料理が主軸の場合は対象外となるケースもありますが、判断が難しい場合は事前に警察署へ確認しましょう。
許可が必要な飲食店の条件
深夜営業の許可が必要となるかどうかは、以下の2つの条件で判断されます。
午前0時?6時の時間帯に営業を行う
酒類の提供が中心のサービスである
これらの条件を満たす場合、必ず届出を行わなければなりません。仮に無届で営業した場合、50万円以下の罰金という行政処分の対象になります。深夜帯に営業する予定がある店舗は、必ず届出の準備を整えましょう。
深夜営業の許可に必要な書類

深夜営業の許可を取得するには、以下の書類を提出する必要があります。
深夜営業開始届出書
営業の方法を記載した書類
営業所の平面図(照明・音響設備図など含む)
定款・登記事項証明書(法人の場合)
本籍地記載の住民票(役員分も含む)
平面図や求積図などの図面作成には専門知識が必要なため、場合によっては行政書士への依頼も検討する価値があります。
届出の流れと所要日数の目安
届出は、営業開始日の10日前までに行う必要があります。警察署に書類を提出し、受理されれば、その翌日から10日後に営業が可能となります。
ただし、書類に不備があれば受理されず、再提出が必要です。事前に警察署と確認を取りながら進めることで、スムーズな対応が可能になります。
深夜営業のための立地と設備要件

営業許可を受けるには、立地と設備にも条件があります。主な要件は以下の通りです。
店舗が住居専用地域でないこと
客室が9.5㎡以上(1室の場合を除く)
客室内に見通しを妨げる構造物がないこと
店内の照度が20ルクス以上であること
また、照明・音響・防音設備の設置状況によっては、追加対応が求められる場合もあります。
プレオープンとは何か?

プレオープンとは、正式な開店(グランドオープン)の前に行う試験的な営業のことです。英語の「pre open」に由来し、本番同様の環境でスタッフのオペレーション確認や接客練習を行い、実際の問題点を洗い出すために行います。
この段階での失敗は本番に活かすための材料と捉え、事後の改善へとつなげましょう。
プレオープンの目的と効果
プレオープンを実施する目的には主に以下のようなものがあります。
スタッフの実地トレーニング
接客や動線の確認
設備や備品の最終チェック
口コミによる認知拡大
フィードバックによる改善
本格的な営業に入る前に小さな不備を把握しておくことで、グランドオープン時のトラブル回避が可能になります。
プレオープンの招待客の選定方法
プレオープンで誰を招待するかによって、得られる効果は大きく変わります。
家族・友人:率直な意見が得られる
地元住民:地域に根付いた認知拡大
同業者:専門的な指摘
メディア・インフルエンサー:広範なPR効果
目的に応じてターゲットを分けて複数日開催するのも効果的です。
プレオープンの実施前に準備すべきこと

実施に向けて、以下の準備が必要です。
実施日程と時間の設定
招待状・告知の準備
特別メニューや割引価格の検討
返礼品やクーポンの用意
スタッフロールプレイングの実施
できるだけグランドオープンに近い状態で行い、緊張感のある場を演出することが望ましいです。
プレオープン後に必ず行うべきこと
プレオープンが終わったら、以下の対応が不可欠です。
アンケートやヒアリングによるフィードバック収集
スタッフとのミーティングと反省会
発見された課題の優先順位付けと改善策の実施
SNSへの投稿促進と反応の確認
ここで得た情報を次の営業日に活かすことで、顧客満足度を大きく高めることができます。
プレオープンの注意点とリスク管理

成功に向けてプレオープンで注意すべき点は以下のとおりです。
来客数の増減に過度な期待をしない
無料招待の際はフィードバックの質に注意
許容量を超える人数は招かない
トラブル時の対処マニュアルを用意する
練習だからと油断せず、本番同様の意識で臨むことが大切です。
プレオープンと深夜営業の関連性
深夜帯に営業を計画している場合、プレオープンも深夜時間帯で実施するのが望ましいです。本番に近い環境で課題を発見し、深夜特有の問題(照明、騒音、動線など)を洗い出すことができます。
また、深夜営業許可が下りた後であっても、実地テストを兼ねたプレオープンで設備と体制を確認するのは非常に有効です。
まとめ|営業成功への準備はここから
深夜営業の許可は、飲食店が深夜帯において営業するうえで欠かせない法的手続きです。同時に、プレオープンは店舗運営の質を高め、成功へと導く準備段階です。
どちらも面倒に見えるかもしれませんが、実施すれば確実にその後の営業に好影響を与えます。届け出のタイミングと、プレオープンの質を高めることが、成功の鍵です。

