不動産管理の仕事には資格が必須ではありませんが、業務を円滑に進め、信頼を得るためには資格取得が大きな武器になります。
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不動産管理に資格は本当に必要か?

不動産管理の仕事は、法律上「資格がなければ行えない業務」ではありません。賃料の徴収や修繕対応、入居者対応といった実務は、資格がなくても可能です。しかし、トラブルの防止や業務の質向上、さらに契約時の説明責任などには、一定の専門知識が求められます。
たとえば、契約に関する説明や重要事項の案内などは宅地建物取引士の独占業務です。また、賃貸住宅管理に関する専門知識を持つ「賃貸不動産経営管理士」は、実務レベルで重宝される存在となっています。法改正に伴い、一定の管理戸数以上では「業務管理者」の配置が義務づけられており、資格者が求められるケースも増えています。
無資格でスタートできる業界である一方、専門性を備えた人材が高く評価されることもまた事実。不動産管理において資格は「持っていて損はない」どころか、「あることで道が開ける」大きなアドバンテージです。
代表的な不動産管理関連資格一覧

不動産管理に関わる代表的な資格は、以下の通りです。
宅地建物取引士(宅建士)
賃貸不動産経営管理士
マンション管理士
管理業務主任者
不動産鑑定士
土地家屋調査士
不動産実務検定(民間資格)
次の見出しでは、主要資格についてさらに詳しく解説します。
宅地建物取引士の役割と資格内容
宅地建物取引士(通称:宅建士)は、最も知名度の高い不動産関連資格です。
主な業務は以下の通りです
重要事項説明(宅建業法第35条)
契約書への記名・押印(第37条)
不動産売買や賃貸契約の仲介を行うには、必須の国家資格です。不動産管理業務だけに限らず、将来的に売買仲介も視野に入れるなら、ぜひ取得しておきたい資格です。
試験概要 | |
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試験日 | 年1回(10月) |
合格率 | 約15~18% |
勉強時間の目安 | 約300~400時間 |
受験資格 | 制限なし |
賃貸不動産経営管理士の実務的価値

2021年から国家資格に昇格した賃貸不動産経営管理士は、管理現場のスペシャリストといえる存在です。
主な知識範囲は以下の通り
賃貸契約の法的知識
入居者対応のルール
建物管理・修繕に関する基本事項
賃料管理の実務
原状回復や敷金精算などのガイドライン
また、200戸以上の管理を行う事業者では「業務管理者」の配置が義務となっており、同資格がその要件となっています。
試験概要 | |
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試験日 | 年1回(11月) |
合格率 | 約27~31% |
勉強時間の目安 | 約100~250時間 |
受験資格 | 制限なし |
マンション管理士のコンサルティング力
マンション管理士は、分譲マンションの管理組合に対して助言や運営支援を行う資格です。
以下のような内容に精通しています
管理規約の整備
修繕積立金の計画
住民トラブルへの対処方法
管理会社との契約内容の見直し
試験概要 | |
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試験日 | 年1回(11月) |
合格率 | 8~12%(難関) |
勉強時間 | 約500時間 |
受験資格 | 制限なし |
賃貸管理というよりも、分譲マンション寄りの専門資格ですが、一定の知識は賃貸物件の維持管理にも応用できます。
管理業務主任者の資格と管理現場での役割

管理業務主任者は、主にマンション管理会社に配置が義務づけられている国家資格です。
業務内容は以下の通り
管理委託契約の内容説明
管理規約の整備
管理報告の説明業務
試験の内容は、マンション管理士と類似点が多いため、同時に受験する人も少なくありません。
試験概要 | |
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試験日 | 年1回(12月) |
合格率 | 約20~25% |
勉強時間 | 約300時間 |
受験資格 | 制限なし |
不動産鑑定士は価値を見極める専門家
不動産鑑定士は、不動産の適正な評価額を算出する専門職です。
次のような場面で活躍します
賃料の適正価格を判断したいとき
相続や売却の前に評価を行う場合
不動産評価書の作成
試験概要 | |
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合格率 | 短答式15%前後、論文式はさらに狭き門 |
試験形式 | 短答+論文 |
勉強時間 | 2,000時間以上が目安 |
実務においては、評価能力よりも高い分析力が問われる資格です。不動産管理だけでなく、不動産全体の知見が問われます。
土地家屋調査士の役割と取得メリット

土地家屋調査士は、不動産の登記に必要な測量や調査を担う国家資格です。
業務内容は以下の通り
土地や建物の測量
表示登記の申請
境界確認や筆界特定業務
賃貸物件の管理というよりも、所有不動産の維持や法的整備を行う場面で活かせる資格です。
試験概要 | |
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試験形式 | 筆記(択一+記述)+口述 |
合格率 | 約8~10% |
勉強時間 | 約600~800時間 |
不動産実務検定は実践型の民間資格
不動産実務検定は、空室対策やリフォームなど、現場目線のスキルが学べる民間資格です。
取得メリットは以下の通り
管理業務の流れが体系的に理解できる
自主管理にも活かせる実務知識
研修講座が豊富で初心者にもやさしい
試験概要 | |
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受験資格 | 制限なし |
合格率 | 2級80%、1級50% |
試験形式 | 随時オンライン対応 |
どの資格から取得すべきか?目的別に解説

目的によって、取得すべき資格は異なります。
現場で即活用したい 不動産実務検定
段階的にステップアップするのも良い方法です。たとえば、まずは「賃貸不動産経営管理士」を取得し、実務を通じて宅建士や管理業務主任者へ挑戦するルートも人気です。
資格取得に向けた勉強方法と時間配分
資格の難易度に応じて、計画的な学習が不可欠です。
スケジュールの策定
試験日から逆算して、1日単位で計画を立てる。
効率的な勉強法の導入
市販の参考書+オンライン講座+過去問演習の組み合わせがおすすめ。
継続学習の習慣化
1日30分でも継続することで記憶の定着が促進されます。
模試の活用
試験本番に近い形式で練習することが合格への近道です。
不動産管理資格を活かすキャリアパス

資格を取得することで、次のようなキャリアパスが広がります。
管理会社での昇進や手当の対象になる
不動産オーナーとしての実務力が増す
将来的に不動産管理会社を設立しやすくなる
専門性をアピールし、業務委託の受注がしやすくなる
ただし、資格だけでなく実務経験とのバランスも重要です。資格を活かすには、現場での積み重ねがあってこそ意味があります。
まとめ
不動産管理に資格は必須ではないものの、取得することで大きなメリットを得られます。特に、宅地建物取引士や賃貸不動産経営管理士などは実務に直結する資格として非常に有効です。どの資格を目指すかは、現在の立場や今後のキャリアビジョンに応じて決めるのが賢明です。
まずは、自分にとってどの資格が「現場で活かせるか」「将来の可能性を広げるか」をよく考え、1つずつ着実に挑戦していきましょう。